日本酒に合う鍋はきっと蔵元が知っている。蔵元おすすめ鍋を熊本の「なべさん」に食べてもらった

日増しに寒さが厳しくなりましたね。

こんな時に欲しくなるのは、美味しいお鍋…じゃありません?昨今いろんなお鍋があるので、何を食べるのか迷うところではありますが

餅は餅屋

日本酒は蔵元

鍋はナベさん

ってことで、美味しい日本酒を造っている蔵元がガチで食べている鍋を熊本に住む「ナベさん」に集まりいただき、食べてみることにしました。

3人寄ればワタナベの知恵

さっそく各蔵元に「まかない的に食べている鍋はないでしょうか」と質問したところ

山村酒造の山村弥太郎さんが

「まかないじゃありませんが、うちでよく食べている酒鍋ならありますよ」との回答が。

やった。これを作るしかない。

早速レシピを教えてもらいましたが、問題は誰が作るのか?という点。レシピをそのまま公開するだけじゃちょっと面白みが欠ける。

何かないか…

鍋を作る…

鍋を…

なべ….

あ。

「苗字がナベさんに作ってもらって、ナベさんに試食してもらえばいいんじゃ」

 

ナイスアイディア。

 

ワタナベさんでもタナベさんでもナベタさんでもいいんです。要は苗字に「ナベ」がついていればそれで。

てことでスタッフ探しました。

こんなふざけた企画に乗ってくれる人はいないかもしれない。だって忙しい年末だもの。そう思っていたのですが…

熊本では見ない日がない!ってくらい忙しいこの2人がまさかのOK。

左 ナレーター 渡辺 大輔さん

右 タレント マッキーさん(本名がワタナベ)

あとで試食担当のナッツカンパニー代表 料理研究家 渡辺夏子さんが合流することに。

ナベ縛りで集めたのですが、まさかのワタナベ縛りになってしまいました。

山村酒造に伝わる「酒鍋」レシピ

まずはそれぞれのレシピ、そして作り方をご紹介します。

弥太郎さん&渡辺 大輔さんコンビが作るのは、山村酒造に伝わる「酒鍋」

【材料】
・日本酒(れいざん)1升
・鴨肉(無ければしゃぶしゃぶ用豚肉)
・油揚げ(薄くて小さいタイプ、お稲荷さんとかに使うやつ)
・小松菜
・うすくち醤油
・ポン酢

 

【作り方】

1.土鍋に、日本酒を1升入れます。

2.一気に温めずに、じわじわ温めていきます。←これポイント。

3.ある程度温まってきたら、酒に火をつけます。揮発するアルコールに火がついて、オーロラのような炎がフワフワと綺麗に出るのを眺めながら、まず1杯呑みます。

4.炎が消えたら、うすくち醤油を少量(鍋ひと回しくらい)入れます。

5.まずはお揚げをいれて、いただきます。

6.その後続けてお揚げ、お肉、小松菜を随時入れながら、ポン酢でいただく感じです。

 

「ほぼ日本酒のみで水炊きをするイメージですかね。シンプルですが、日本酒由来の苦味とポン酢が相まって、酒が進む大人のシンプル鍋です。」

 

なるほど。これは1人で愚直に向き合う鍋にもぴったりレシピ。

 

「赤酒」を活用した千代の園に伝わる鍋レシピ

続いて「赤酒」を活用した山鹿市 千代の園に伝わる鍋。赤酒はほかに瑞鷹でも製造販売されています。

熊本県民であれば慣れ親しんでいる赤酒。

江戸時代、肥後細川藩(現熊本県)では赤酒以外のお酒の製造は禁止されており、他の藩からのお酒の流入も禁止されていた、いわば「お国酒」なんです。

甘味を感じるのが特徴なのですが、お正月にお屠蘇としていただくのが熊本流。

 

今回はこの赤酒を割下として、すき焼きを作っていこうと思います。

 

「すごくシンプルです。割下を酒1:赤酒1:醤油1にするだけです。あとはお好きな具材でどうぞ」

 

「え?そんなんでいいの?お砂糖は?」

「不要だそうです」

「そっか!確かに甘いもんね!」

とはいえ、砂糖なしでどのような味わいになるのか未知数。ドキドキしながら作っていくことに。

いよいよ調理スタート!

まず取り掛かったのは赤酒を活用したすき焼きを作るマッキ―さん。

さすがは主婦。慣れた手つきでびゃんびゃん進めていきます。

「本当に赤酒と醤油と酒だけでいいならこんな簡単なことはないよね!」

「大丈夫です。あとお酒をうっかり忘れたので、さきほど「れいざん」をめぐんでもらいました。」

ありがとうございます。山村さん。

「よかったですね!ではさっそk…」

「うまああああああ!!!!」

「いやなんで飲んだ!!!!!」

美味しい香りに誘われて、もう我慢できなくなっちゃったんですって。

 

 

一方、男性ペア

「何しているんですか」

「ん?鍋にれいざん入れて、火にかけてんの」

「一升?」

「一升」

なんという贅沢。

次は緩やかに火にかけていきます。

「まずは、弱めの火加減でゆっくり温めて、液体の表面が若干ゆらゆらと見えてきたくらいに、ライターで着火してみます。

火がついたら、炎が激しくならないように弱火のまま温めます。

火が消えたら沸騰し出すので、具材を入れるんですが、それを待つ時間にも、お酒が飲めちゃう」

 

これはいいですね。何かとせわしない時期ですが、あえてゆったりとした時間を作るというのは心の静寂にもつながります。炎はリラックス効果もありますし。一杯飲みながら炎待ちってなんだかそれだけでかっこいい。

ゆらゆらと揺れる水面を見ながら、男性陣はまったりモード。

「じゃ私そろそろ割り下作りますよー」

まずはお肉を軽く炒めて

ここに千代の園の赤酒をドン!

分量とかそんな細かな話はいいのです。入れた分を1と考えてあとは同じ分量だけお酒と醤油を入れればいいのです。

「そういえば、そのまま1:1だと醤油で少しからくなっちゃうかもしれないって言ってました」

「OKです!じゃあとは個人の好きな感じで!」

 

あとは白菜やキノコ類、豆腐などお好みの具材を入れて煮込めばできあがり。

早い。なんという早さ。

それでは酒鍋の進捗を見てみましょう。

おおおおおおお!!!青い炎!

「これ(炎)がね、何してもでなくなったら具材を入れる合図です」

チャッカマンでお酒の上澄みに火をつけると、ご覧のように青い炎があがるのですが、これを幾度となく繰り返します。

そのうち青い炎が出なくなったら

こんな感じで白い泡が出るので、これが出てきたら完成の合図。

おすすめの油揚げを入れ十分に浸せば、完成!

 

それでは実食!

試食担当でおよびしていた料理研究家の渡辺夏子さん(右)に実食してもらいましょう。

 

まずは酒鍋。

 

「…うん!!酒!!!」

「え?」

「なんていうんだろ。これはね、食べる日本酒!だから食材はシンプルなほうがいい!」

 

「そうなんですよ。これは食材を極力シンプルにするのがポイントでして。なんなら具材も一緒に煮込むんじゃなくて1種類ずつをおすすめしてます。例えばこの油揚げだけ食べて、次は小松菜だけ。みたいなイメージです。

とはいえ、好みの問題になるので、全然最初から具材入れちゃってもそれはそれで。」

食いしん坊の集まりですから、そう聞くと迷いなくすべての食材を投入。

れいざんの辛口のお酒がそのまま残っているので、まるで食事中に熱燗を飲んでいるようなそんな気持ちになるんです。というのも、このれいざんは食中酒にピッタリのお酒。

しかも、お料理の味を邪魔しないというレベルではなく素材そのものを引き立ててくれる名わき役なんです。

その長所がそのまま生かされた…これぞ

酒鍋!!!

 

「じゃ次は赤酒のすき焼き食べてみよー!」

お次はマッキーさんのすき焼き。

割り下は、千代の園の赤酒と醤油のみ。本当に砂糖は入れていませんがさあどうなる!?

「うん!!!うっま!!!!!」

これは今まですき焼きのタレとか使っていた自分を恥じるレベル。だってこんなに簡単に割下作れるんですもん。

「強いて言うのであれば…醤油よ。同じ熊本の醤油を使ったほうがより親和性があったかも」

「あー!そうかも!」

お試しになられる方はぜひ熊本のお醤油で!

 

ぜひ、お試しください!

今回は、山村酒造の「れいざん」で作る酒鍋と、千代の園の「赤酒」で作るすき焼きをご紹介しました。

れいざんは辛口なので、つまみとして食べられるお鍋。赤酒は甘めなのでその甘味を活かしてすき焼きの割下にしてみました。それぞれのお酒の特徴が活きる素敵なお鍋でしたよ。

寒さ本番となる今からの季節、ぜひお鍋のおともとして日本酒を活用されてみてはいかがでしょうか。