日本酒でもやしを栽培したらどうなるのか

 

庶民の味方「もやし」。原材料となる緑豆を水につけてるだけで育つ野菜ですが、実は日本酒の業界用語で「もやし」というものがあるんです。

お酒造りで必要な種麹のことを、もやしって言うんですって。

なるほど。もやしもやしもやし…

そうだ。庶民の味方であるもやしを日本酒で育てたらどうなるのか。

種麹をもやしと呼ぶのであれば、その種麹で作られた日本酒を使い、もやしを育ててみよう。

そこで今回は、もやし製造業の「熊本製萠」の力を借りて、日本酒でもやしが育つのか、そしてどんなもやしが育つのか栽培してみました。

 

専門家の力を借りに「熊本製萠」へ

美味しいもやしを美味しい日本酒で育てたい。どうせやるなら自由研究レベルで好き勝手やるのではなく、本気でやりたいと「もやし栽培のアドバイスが欲しい」とだけ伝え、熊本市西区にある「熊本製萠」にやってきました。

対応してくださったのは、熊本製萠の鳥井社長。突然日本酒を渡し、「日本酒でもやし育てたいんですけど、育ちますかね?」と相談すると爆笑。

「やったことないですけど、面白いですね。やってみましょう」と即答いただきました!

きっと大丈夫。鳥井社長も「もやしもんのもやしですもんね!」とすぐに分かってくれました。

なお、今回はコンプライアンスを遵守するために国税局に相談し、万が一アルコールを含むもやしが誕生してしまっても税法上、問題ないということを確認しております。電話口の動揺が忘れられません。

いざ日本酒もやしの栽培スタート

もやしの原料となるのはこちらの緑豆。これを水につけ、毎日交換しながら暗い部屋に置いておくと1週間ほどで慣れ親しんだもやしになります。

今回は、普段、熊本製萠で栽培しているのと同じ井戸水、そして日本酒(香露)で栽培します。

日本酒はそのまま使ったパターンと、一度沸騰させアルコールを飛ばしたパターンと2種類用意します。

まずはアルコール抜きの日本酒のため、一度お酒を沸騰させアルコール分を飛ばします。

めちゃくちゃお酒のいい匂いが部屋の中に充満しました。飲みたい。

それを一度、冷ましてから緑豆の入った瓶に入れます。

日本酒のみの瓶にはそのままトプトプとついでいきます。

そして、最後に井戸水を。

そうして準備が完了したこの3つの生育を1週間かけて見守っていきたいと思います!!

栽培2日目~4日目

翌日、再び熊本製萠を訪問。なんだかワクワクしてきたのですが、まだ2日目ということもあり、どのもやしにも特に変化なし。

そして3日目。井戸水で栽培している通常のもやしは発芽が始まっていました。

豆が割れてニュキッと白いもやしの子供が生えてきています。

日本酒で栽培しているものは、初日から特に変化なし。きれいな色の緑豆のままです。

アルコール抜きは、若干ですが実が膨らみ皮がむけ始めている粒が見受けられます。

井戸水のものより成長は遅いものの、日本酒のもの比較すると変化が見られます。これは期待。

4日目。井戸水のもやしが、だいぶ膨れてきています。日本酒もやしには変化なし。

アルコール抜きもやしは、昨日よりも膨らんでいました。

覗き込んでみると、前日より若干皮がむけている粒が増えたかな?と感じられました。

ぜひとももっと頑張ってほしい。

栽培5日目~7日目

栽培5日目。なんか井戸水のもやしがモンスターみたいになっていますが、これが普通。

日本酒のもやしは相変わらず変化なしの恥ずかしがり屋さん。大器晩成型なんだと信じている。一番、待ち望んでいるのはあなたの成長なのだから。早く芽吹いてほしい。

そして、アルコール抜きのもやしは…

ちょっとですが、発芽してる!!!!!

角みたいなのがピュン!!と伸びています。これは期待が高まってきました。

アルコールを飛ばしているとはいえ、日本酒は日本酒。きっと日本酒味のもやしに育ってくれるに違いない!!

栽培6日目。井戸水のモンスターがもっと禍々しくなっています。ほんのりピンク。

なんでも、もやしは常に暗闇で育てないと白くはならないそうで、撮影のために毎日数分明かりに当てただけで変色してしまうんだとか。もやしってそんなデリケートなんや。

日本酒もやしは相変わらずだんまりを決め込んでいますが、アルコール抜きもやしは芽こそ伸びていないものの、膨らんで体積が増していました。

そして8日目。はい、7日目が飛んでいます。なぜかというと私が終日遠方取材で立ち寄れなかったからです。すみません。

1日すっぽかしただけで井戸水もやしは完全に別人。瓶に詰まってミッチミチになっていますが、だいたい通常はこのくらいまで育つと出荷できるそうです。

日本酒もやしは相変わらず、変わらぬ姿で瓶底に佇んでいます。えーくらって発芽を忘れてるんじゃなかろうか。

そして、アルコール抜きのもやしなのですが…

脱皮してる粒こそ増えたものの、発芽しかけた状態で止まって、全然育っていません。どうして?

鳥井社長は「もうこれ以上成長しないかもしれませんね…」と悲しい表情をしていましたが、祈れば通じると信じて拝み倒しました。

栽培最終日9日目 果たして結果は…?

そして9日目。井戸水もやしは完全に自然に還ったかのような見たことのない姿になっています。

日本酒もやしはいつもと変わらず、同じ姿でそこにいました。もはや緑豆の日本酒漬け。

期待していたアルコール抜きもやしも、発芽したあの日から成長が止まってしまいました。

鳥井社長も水以外で栽培するのは初めてだったらしくがっかり。特にアルコール抜きは発芽しかけていたからこそ、逆に悔しい。

手にとって見ると、みずみずしく元気に見えますが、ついぞ、ここから大きくなることはありませんでした。

しかし、毎日顔を合わせてきただけにこのまま終わりでさようならも寂しい。

なにより、こいつら育てるのに日本酒1.5升分くらい使っているので、超コストかかってるんですよね。成功してても1パック単価1500円くらい。普通の30円くらいのもやし50袋買えますよ。なので…

 

もったいないので、食べてみました。

 

おええええええええええええ。

腐りかけてました。すごくエグイ味してました。

これは育たない。仕方ない。

 

結論 日本酒ではもやしは育たない

日本酒でもやしを!そんな夢に満ち溢れた実験を熊本製萠さんご協力のもと、ガチでやってみましたが、結論は「日本酒ではもやしは育たない」でした。

超高級もやしが完成したら色々作ってみたい料理もありましたが、叶わぬ夢と知りました。

アルコール有りと無しでも多少の変化があったので発芽にはアルコールが関係していそうですが、成長には日本酒に含まれる糖やこうじも関係してそうです。いずれまたリベンジしてみたいと思います。