日本酒って大好きなんだけど、日本酒ウンチクでマウントされるのは嫌。
そんな人少なくないんじゃないかと思うのです。
好きなお酒を楽しみたいだけなのに
「言ってしまえば日本酒というのはうんだらかんだら…」
うっせーわ!
って。
でもまだ自分の中のナンバーワンを探している人ならば
「このお酒はこんな感じなんだ」「この県のお酒ってどうなの?」
っていう情報は欲しいもの。
そこで今回、熊本の日本酒好き「木村さん」を呼んで、熊本のお酒ってこんな感じなんだよ!を分かりやすくご紹介したいと思います。
謎の木村さんにざわつく蔵元たち
まずは今回、何も聞かされず集められた熊本の蔵元をご紹介します。
通潤酒造社長 山下泰雄さん
瑞鷹副社長 吉村謙太郎さん
山村酒造専務 山村弥太郎さん
千代の園取締役 本田裕理さん
4人には「新酒もしくは蔵のおすすめの1本をご紹介してください」とだけ伝えています。
そして今回の舞台は、通潤酒造の中にある寛政蔵。
寛政蔵はその名のとおり、寛政4(1792)年に造られたという熊本県内最古の酒蔵。
内部はテーブル席をはじめ、ソファやえんがわ席など設けてあるので、季節や人数に応じてゆったりと過ごせる空間であると地元でも評判な蔵。
ノンアルコールの甘酒やスイーツも展開されているので、ハンドルキーパーの方も楽しめますよ。
「本日はお忙しい中、お集りいただきありがとうございます。実は今回ゲストをお呼びしておりまして」
「え?誰なの?」
「それではご登場いただきましょう。この方です!」
え?
え??
え???
「皆様全員キョトンですが、気にせずご紹介します。本日のゲスト、日本酒が好きすぎる木村さんです!!」
「木村です!今日は通潤酒造の山下社長リスペクトで蝶ネクタイできました!」
改めてご紹介しましょう。
左 「美味い酒が呑めるから来て」とだけ言われ、のこのこやってきた司会のマッキ―さん
中央 まさに狐につままれた山下社長
右 日本酒好きな木村さん
今回は木村さんと共に、もっと熊本の日本酒を分かりやすく伝えようと思います!
各蔵元の推しの1本をご紹介
今回、各蔵元に持参してもらったのが推しの1本。
並べてると分かりやすいのですが、それぞれのお酒が色だけでも全く異なる表情をしています。
さあ日本酒好きな木村さんをこれをどう表現するのか。
「それでは山下さんからお願いします」
「これは終わりの始まりと言われております。度数が20度あるので飲んだら最後という意味ですね」
「なるほどー。これはもう通潤らしいお酒。優しくて強い。」
続いて瑞鷹。持参のお酒は、これぞスタンダード「大吟醸YK35」
「本当にきれいなお酒だと思う。完成されてるもんね。これぞ王道」
続いて山村酒造。持参のお酒は新酒「阿蘇の酒れいざん しぼりたて純米生原酒」
「これまたキレイな酸!スッキリとして飲みやすい」
最後に千代の園。持参したお酒は、地元熊本でも入手困難な人気酒「産山村」
「もうね大好き!フルーティーというかミルキーというか」
わかったような分からないような。
まあとりあえず、県産酒で乾杯といきましょうか!
コロナ禍で感じる文化の変化
最初は動揺しかなかった蔵元たちも、徐々に打ち解けてきました。
さすがはお酒のチカラ。
「まーた出てきましたね。新型コロナ!熊本の日本酒界ではどのような影響でしょうか?」
「コロナでって言うよりも我々熊本の酒蔵は地震のときから大きく変わっていったなとは思ってます。被災した当時はありがたいことに応援の意味も込めて県外から多くの発注をいただき助けてもらいました」
「震災のとき吉村君のとこ…あ、瑞鷹さんなんて大変だったよね」
「まあ、古いからどうしても耐震部分は…」
「で、やっと復活できたと思ったら今度はこれ(コロナ禍)」
「とはいえ、地震のときだってどうにかこうにか飲みには出てたじゃない。それが全くなくなったって言うのがね」
「うんうん」
「でも俺はこれリセットというか過渡期に入っているんじゃないかと思ってる。コロナ禍を機にお酒の飲み方が変わるんじゃないかって」
「私もそれは思ってて。前はさ酔っぱらうために飲むって感じだったじゃない。でももう今はそんな感じじゃない。いいものを少しずつ味わうって言うのかな。酔うためのツールじゃなくて、会話を楽しむためのツールになってくるんじゃないかなって」
お酒の力を借りて、無理に酔って楽しむんじゃなく
お酒の美味しさを楽しむ。
そんな飲み方に変わりつつあるのかもしれません。
お酒の味を伝えるのが下手でもいい事を言う、それが木村さん。
熊本の日本酒が好きだから熊本の蔵元にあるある言いたい木村さん
熊本の日本酒が大好きな木村さん。
仕事の縁あって現在、熊本に居住していますが元々は東京の方なんです。
実は熊本県に赴任される前から「熊本酵母」にいち早く注目していたガチ勢。当時から「熊本の蔵は規模は小さいながらもそれぞれが個性的にやってて面白いな」と感じていたんだとか。
「10年前かな、千代の園さんの酒米を作る田植えのイベントで産山村に行って参加させてもらったんです。年に2回程度しか行ってなかったんですけど、地元の方とか本当によくしてくれて。もう親戚かってくらい」
遠くの親戚より近くの他人
なんてよく言ったもので、どんどん土地にもお酒にも愛着が生まれてくるきっかけになったんだそう。
そんな熊本の日本酒を愛してやまない木村さんだからこそ、思い切って今日は熊本の蔵元に言いたいことがあるんだそう。
「さっきの話に戻っちゃうんだけど、日本酒の世界ってどんどん変わってきているんだと思うんです。
せっかく元々特徴のある蔵が熊本に揃っていて、なおかつ酵母からオール熊本でって全国的に見てもすごいことなんですよ。
だからこそ、蔵元のキャラも然り、それぞれの色を出して欲しいってのはあるかな。
1つの蔵元でも全く表情が違うお酒を作っててふり幅が広いのも魅力だし、だからこそ私は熊本のお酒って面白いなって感じるんですよ
山村さんは阿蘇の高森、本田さんの千代の園は山鹿市。せっかくさ観光地というか立地に恵まれている部分もあるし、蔵が地域の開かれた核になってほしい」
「そうですね。どんどん蔵にも遊びに来て欲しいし、遊びにきたいって思ってもらわなきゃいけませんよね」
「うちも色々とそれ考えてて、立ち飲みできるようなブース作りたいなとかですね」
「あとはちょっと体制も変えたくて。どうしても分業化になってしまっている分、現場にいる人間ってエンドユーザーの表情とか見えにくいんですよ。でもそうじゃないんだよ、あなたたちがしているお仕事ってこんなにも人を笑顔にするんだよって見てほしいから、いろんな社員がお客様の声を聞ける機会を増やせないかと思案中です」
「分かる分かる。美味しい!って顔見せたいし、そうすることでより仕事にプライドもてるっていうか」
「うちはイメージとしては地域から土地をお預かりしているという認識なんですよね、だから観光資源のゾーンとしての立ち位置にならなければと考えてます」
「日本酒造りがさかんな県だと、県全体でブランディングしてるからまとまりがある分、どの蔵のお酒をいただいてもさほど大きな差ってあまりない印象なんですよね。対して熊本ってそれがない。
熊本の酒って蔵によって出している味なんて全然違うし、下手すれば同じ蔵でも品種によっては全く違う表情を見せてくれることもある。
そこが最大の魅力だと私は感じていますね」
熊本県の蔵元と一言にいっても北は小国町から南は津奈木町と非常に広範囲。その点在を利として、それぞれの蔵元が盛り上がることで県全体も盛り上がっていければ。と考え、実行に移すように動いているみたいですよ。これは今後が楽しみ。
そろそろネタバレ言いたい
素晴らしく真面目な話が続いたかと思えば
突然、YouTubeチャンネルをアピールして爆笑をさらったりと、大いに盛り上がったところで、私は悩んでいました。
いつネタバレするべきか。
と。
下手なタイミングで伝えても「おっ…おう…」ってなるし、これ最大に難しい。
いっそのこと木村さんが自分で正体をバラして欲しい。
そう願っていたところ
ファーストアクションを起こしたのが本田さん。
「木村さんってお仕事何をされているんですか?」
「私?」
「はい」
「副知事。熊本県副知事の木村敬です。」
「…ですよね」
「デスヨネ」
「デスヨネ」
蔵元たちも薄々気づいていたそうですが、「だとしたら、この謎の設定に全力でのっからねば」と使命感に燃えていてくれてたんだそう。みんな優しい。ありがとう。
進化するクラシックモダン集団
「熊本のお酒ってどんなものなの?」
そう聞かれたら
クラシックモダン
この一言に尽きます。
昔ながらの製法で変わらない味を守りつつも、常に変わっていく情勢に合わせ多様化させる。
まさに温故知新なんです。
それはきっと静かに、でも確かに熊本という土地で先代、そのまた先代から蔵元たちが脈々と受け継がれていたスピリット。
先人たちの背中をその眼に、その魂にしっかりと刻まれている蔵元たちは、まさに伝統を守りながらも進化を恐れない、熊本のクラシックモダン集団と言えるでしょう。
まあここには書けない下ネタぶちこんできたときには、本田さんの背中が怒りに満ちてましたけどね!
今後も気になるゲストを迎え、日本酒にまつわるアレコレを忌憚なく語っていきますよ。ぜひご期待ください。
えーくらい編集長。
得意なことはハエ叩きです。