これからの時代の酒蔵はどうあるべき?「地域性とアイデンティティ」を掲げる瑞鷹の目指す未来

 

日本で酒と言えば日本酒。日本神話の時代から登場するほど歴史は深く、酒蔵は地域とって欠かせない存在でした。故に、その地域の文化や歴史と密接な関係がある酒蔵も多いのです。しかし、時代は変わり酒の消費量が減少する世の中で、酒蔵や酒造りのあり方も変わってきています。そこで、熊本市に蔵を構え155年の歴史がある瑞鷹株式会社の吉村謙太郎副社長に瑞鷹の歴史と文化、そして今後の酒蔵のあり方について、話を聞いてきました。

155年の歴史 より強くなる地域への思い

今回訪れたのは、熊本市南区川尻にある瑞鷹株式会社の川尻本蔵。古くから港町や宿場町として栄えたこの町は、今でも昔ながらの古家や倉庫が建ち並び、情緒と文化を体感できます。

そんな昔ながらの趣を残したこの建物こそ、瑞鷹の社屋です。

今回、お話を聞いたのは瑞鷹株式会社の副社長、吉村謙太郎さん。

早速、酒蔵と酒造りについてお話を聞いていきましょう!!よろしくお願いします!!

こちらこそよろしくお願いします!!!!

まず、お話を聞きたいのは、酒造りの変化について。昔からある酒蔵で規模も大きくて、なんなら熊本での認知度も高い瑞鷹さんであればきっといろんなお話が聞けるはずです。

やっぱり、時代の変化に合わせていく必要はありますよね。瑞鷹の売りといえば、やはり歴史です。販売量も含め、この熊本と言う土地で他の蔵を引っ張ってきたという自負もあります。ですが、それを守りながらも新しい酒造りに挑戦し、市場に合わせて変化していく挑戦も必要だと考えています。
人口減少や飲酒量の減少、お酒の選択肢の増加などさまざまな要因で環境が変わる中で、昔のように作っただけ売れる世の中ではなくなってきました。同じやり方を続けて戦っていけるわけがありません。

吉村さんによると明治時代には最大で300軒ほどの酒蔵が熊本県内にあったそう。ここ10年20年見てみても日本酒を飲む機会は確かに減ったかも知れません。私は好きで飲んでますけど。瑞鷹さんが最近は崇薫(すうくん)や吉祥瑞鷹のような個性的な酒も作っているのも、理由はそこにあるんですか?

地酒には力を入れていますね。以前は地酒も少なく、とにかく量を造るようなイメージでした。取引先も大手スーパーなどが多数でした。ですが、熊本地震を機に地元に対する思いが強くなり、地酒を造り地元の酒屋に販売していくようになりました。だからこそ、こだわりも強くなり、その分個性が出るんですよね。せっかくなので、もっと蔵も案内しますよ!!

大切なのはバランス 多様性を日本酒でしか出せない味で

瑞鷹の事務所が入る建物の間を抜けると、その先に昔の学校の校舎のような建物が見えます。これこそが瑞鷹の本蔵。

どこを見てもレトロな雰囲気で、なんだかタイムスリップして昔の町に迷い込んだように錯覚する敷地です。

ビンビン感じますね、歴史と文化。

これから大切にしていきたいのは、「地域性とアイデンティティ」だと思っているんです。地域ならではの文化と、歴史によって確立してきたアイデンティティがうちの強みなんですよね。歴史ってそれだけ続いてきた事実が、技術の裏付けにもなっているし、バランスが凄く大切だと思っています。他にも流通と味のバランス、吟醸香やアミノ酸のバランスなんかのバランスがすごく大事。

そうして案内されたのは「酒造資料館」の看板がついた古い蔵。

ここには瑞鷹155年の歴史のみならず、熊本の酒の歴史に関わる貴重な資料が保管されています。

資料館の中には、資料だけではなく古いラベルや看板、ポスターから手記までさまざまな熊本の酒の歴史が展示されています。これはまさしくこれまで積み重ねられてきた酒の文化そのもので、連続性のある技術の裏付けでもあります。

ワインやウイスキーを飲む方も増えている中で、替えのきかない日本酒でしか出せない味を出していきたいと思っています。地域性を出して戦う中で、安さを追い求めたパック酒に戻ってはいけません。それも市場のニーズと合わせると難しくて、日本酒ってある種オタク気質なところがあるんですよね。だから逆張りしだして、醸造アルコールが含まれている「酒はダメで、純米が良い」みたいなことを言われがちなんですけど、今の醸造アルコールって昔の薄めていたものとは違ってかなり技術がいるんです。逆に添加することで香りが伸びるメリットもあるので美味しいお酒になったりもします。そういう技術の積み重ねで生まれた酒だからこそ、ニッチな層に選ばれる側面もあります。

これは、瑞鷹の由来になった鷹の剥製。こんなものまで展示してあるとは……。それはさておき、たしかに醸造アルコールが入っていると安酒のイメージがありましたが、入っていても美味しいのって多いですよね。そんな理由があったとは……。たくさん造りたいから醸造アルコールぶち込んでるんだと思っていましたもん。

酒蔵の在り方を考えたときに、たくさん造るというのはこれからの時代に合わないんですよ。大手メーカーさんなら良いかもしれませんが、地元とやっていくと考えたときに、むしろ製造規模は小さくしていきたいと思っています。実際、最盛期の昭和後期は20倍以上造ってたんですよ。少しずつ増やしていますが、今は明治くらいに造っていた量と同じくらいなんです。

思ったよりめっちゃ少なくなってた。それで経営的には大丈夫なんでしょうか。

もちろん、今は新型コロナウイルス感染症の影響で需要が低迷しているので直近では増やしていきます。今後5年で今の3倍くらいは造りたいなと思っていますが、それでも最盛期の8分の1くらいですね。今から酒を飲む人はさらに減っていくと予想される中で、選んでもらえる努力をしなければなりません。だからこそ、少なくすることで質をキープしていきたいと思っています。技術は間違いなく上がっているので、より良いお酒を造ることに注力していくんです。あとは地域と一緒に観光にも力を入れていきます。

観光蔵に転換を

 

資料館を出て、再び表へ。「今度はこっちの建物を見てもらいたいんですよ」と案内されたのは先程の事務所がある建物の隣の蔵。なんでもかつては醤油を造っていた蔵だとか。

 

こっちもこっちで、立派な建物で、歴史を感じます。本当にここ熊本市内だよな……と思えるほど。

こちらは熊本市の「景観重要建造物」「歴史的致形成建造物」にも指定されているそうです。うん、わかる。それだけすごいもん。これを自慢するために連れてこられたのかと思いきや、そんなわけでもなく中に案内されました。

なにここめっちゃかっこいいんですけど。

ここを、カフェや宿泊施設にできなかな…と考えているんですよ。歴史的な建造物だからこそ人に見てもらいたいですし、地域に人を呼び込む場所にしたいと思っています。何度も言いますが、今後の酒蔵は今まで以上に地域と一緒にやることが大切で、むしろ絶対必要な要素だと思っています。蔵に来てもらって、蔵で買ってもらう機会も増やしていきたいんですよね。昔は酒屋さんに配慮してできなかったんですけど、今では共存していく関係なので、蔵で瓶詰めする前のお酒を飲んでもらったりも体験してもらいたいと思っています。火入れしていない生酒なんて、昔は酒蔵の新酒祭りでしか振る舞っていなかったんですけど、今では技術が上がって流通しています。ですが、やっぱり劣化していないしぼりたての酒を飲んでみてもらいたいですね。

いや、それめっちゃ飲んでみたいです。なんなら樽の酒もパカーンってして飲んでみたい。本当は良いお酒いっぱいあるのに、今まで触れることができずにいたんですね。

直接お客様に足を運んでもらえることで、流通や販売のためにしている味に対して不本意なことをしなくていいんです。満足してもらえる美味しいお酒を楽しく造って、しっかり特徴を出して日本酒の魅力や文化を繋げていきたいですね。

地域に根づいて個性ある酒が生き残りの道

ということで、瑞鷹の吉村副社長にこれからの時代の酒蔵の目指す道筋を聞いてきました。

個人的には酒蔵ごとの個性が尖っていろんなお酒が飲めるようになるとめちゃくちゃ嬉しいですね。地域ならではの独自性があるお酒がどんどん増えていくのが楽しみです!!